当社で取扱う「piab(ピアブ)バキュームコンベア」は、粉体輸送装置の「エジェクタ式 吸引輸送装置」という分類になりますが、
「そもそもエジェクタって何?」というご質問をいただくことが多いので、
今回は改めて、「エジェクタとはどういうものなのか」徹底的にご説明します。
この記事はこんな方にオススメ!
・粉体輸送機の導入を検討している
・「エジェクタ」の仕組みと特長を知りたい
・「エジェクタ式」と「真空ポンプ式」の輸送機の違いを知りたい
エジェクタの役割
最初に、ピアブバキュームコンベアの動作原理を説明します。
エジェクタは、どんな役割をしているのでしょうか?
《 ピアブ バキュームコンベア動作原理 》
①バキュームコンベア本体を密閉状態にして、中の空気を抜き減圧していきます。
②減圧されたバキュームコンベア本体へ、ノズル口から空気が入り込んでいきます。
※これは、空気がプラス圧からマイナス圧へと移動する特性を活用しています。
③この配管内の気流に乗って、粉粒体が一緒に搬送されます。
エジェクタがどのような力を発揮しているか、お分かりいただけましたでしょうか?
エジェクタは、空気を抜いて真空を作るための駆動力となっています。
また、工場内にある「圧縮エア」の供給だけで真空を作ることができるので、「電動式真空ポンプ」を設置する必要がなく、スペースを有効活用できる便利な装置なのです。
エジェクタの動作原理
エジェクタは、圧縮エア(コンプレッサエア)を入れることで動作します。
圧縮エアがエジェクタ内部を流れるとき、気体は大気圧に戻ろうと膨張します。
その際、気体が持っていたエネルギーが運動エネルギーへと変換され、出口に向かって空気が流れ出ていきます。
圧縮エアがエジェクタ内に入ると、瞬時に音速に到達します。
流速が上がると、エジェクタ内部の空間は圧力の低下を引き起こし、外部(コンベア内)の空気を吸い込みます。
こうして真空空間が作られるのです。
ピアブ エジェクタの歴史
ピアブ社 初のエジェクタ製品「Pneucett」
1968年 ピアブ社で、初めてのエジェクタ製品が発売されました。
これは「シングルステージ・エジェクタ」と呼ばれ、1つの流入口と、1つの吸込み口を持っているのが特徴です。
シングルステージ・エジェクタは、「真空度」と「真空流量」の2つのパラメータで構成されています。
ノズル径の太いエジェクタは、到達真空度が低いですが、真空流量は多くなります。
対照的に、ノズル径の細いエジェクタは、到達真空度が高い一方で、真空流量は少なくなります。
言い換えると、1つのシングルステージ・エジェクタでは、「真空流量を多くするか」、「真空度を高くするか」の、どちらかの特性しか得ることができないため、効率的な運搬を実現することが難しかったのです。
ピアブのエジェクタの元となる技術は、スウェーデンの技術者であるGustav de Laval(グスタフ・デ・ラヴァル)氏が、水タービンを利用する発電所で働いていたときに開発した、超音速を発生させる“de Laval nozzle(デラバル・ノズル)の原理”を応用して設計されました。
この原理は、「飛行機が空を飛ぶ」原理にも使われております。
空気が翼の先端に当たると、翼の上側と下側のそれぞれに空気が分かれます。
上側を通過する空気は移動距離が長くなるため、速度が速くなり、気圧が下がります。
その結果、翼の上下に気圧差ができ、その気圧の差が翼を持ち上げる揚力となり、飛行機自体が安定した飛行を行うことができます。
これは、「気体や液体などの流体の速度が上がると圧力が下がる」ことを示した「ベルヌーイの定理」と呼ばれています。
マルチステージ・エジェクタの登場
シングルステージ・エジェクタは、簡易的でコストが安いという利点がある反面、上記の理由で効率を上げるには限界があり、お客様のニーズに応えることが難しくなってきました。
最終的にはお客様の要望する真空度を作り出すため、4,000L/min もの空気を消費する大きなエジェクタを作ることになってしまい、これを使用するのは現実的ではありませんでした。
それから考慮の末、1972年、ピアブのPeter Tell(ピーター・テル)氏は「マルチステージ・エジェクタ」(多段式エジェクタ)の開発に成功しました。
こちらは、1つのエジェクタの後部に、ノズル径の異なる別のエジェクタを接続し、二段階、三段階と繋ぎ合わせたものでした。
二段階目以降のエジェクタは、排気を有効に活用しているため、新たなエネルギーを必要とせず、同等サイズのシングルステージ・エジェクタと比較し、約2倍の速さで真空を作りだすことを可能にしました。
マルチステージ・エジェクタの内部構造
ノズル径の異なる複数のエジェクタが各部屋に分かれて内蔵されていて、一台で「高真空+高流量」を実現します。
シングルエジェクタの「真空度重視」or「真空流量重視」のどちらかしか得られないというデメリットを克服した、画期的なエジェクタなのです。
①真空度:0~-10kPa
エジェクタ駆動時には、全ての部屋から空気を吸い込むため、勢いよく真空を作りだすことができます。
②真空度:-11~-20kPa
一番太いエジェクタの部屋は-10kPa以上の真空を作れないため、-10kPaを超えるとそれ以外の部屋へ空気が流れるようになります。
その際、他の部屋の方が真空度が低くなるため、その差圧により入り口の逆止弁(フラップ弁)が閉まり、太いエジェクタの部屋からの空気の逆流を防止します。
③真空度:-21~-40kPa
二番目に太いエジェクタの部屋は-20kPa以上の真空を作れないため、-20kPaを超えると、それ以外の部屋へ空気が流れるようになります。
その際、他の部屋の方が真空度が低くなるため、その差圧により入り口の逆止弁(フラップ弁)が閉まり、空気の逆流を防止します。
④真空度:-41~-75kPa
三番目に太いエジェクタの部屋は-40kPa以上の真空を作れないため、-40kPaを超えると、最後の一番細いエジェクタの部屋へ空気が流れるようになります。
同様に入り口の逆止弁(フラップ弁)が閉まり、空気の逆流を防止し、最後の一番細いエジェクタで、-75kPaまでの高真空を作りだすことができます。
更なる進化を遂げた「COAX®エジェクタ」の登場
その後ピアブ社は、マルチステージ・エジェクタにさらなる改良を加え、2000年に「COAX®エジェクタ」を発売しました。
これまでのエジェクタは、ノズルが箱の中に固定されていましたが、
COAX®エジェクタでは、一本一本抜き差しができるカートリッジ式ノズルになりました。
これにより、メンテナンス性が格段に向上しただけでなく、真空性能を細かいレベルで調整できるようになりました。
現行のピアブバキュームコンベアには、全てこの「COAX®エジェクタ」が搭載されております。
モジュール化したことで、お客様のご希望に沿った仕様の製品のご提供が可能になりました。
ここがスゴイよ!COAX®エジェクタ
①不具合時にも即復旧が可能!
これまでのエジェクタは、一つの箱の中にノズルが固定されていて、もし内部に損傷が発生した場合は、エジェクタ丸ごとを交換しなければいけませんでした。
COAX®エジェクタは、一本一本がカートリッジ式となっていて抜き差しが可能です。
もし内部に損傷が発生しても、その原因のある一本だけを交換して最小限のコストと時間で復旧させることができます。
②ムダのないエア消費でコストダウンに貢献!
以前のエジェクタは、決められたラインナップの中で、あるサイズでは流量が少なく、一つ上のサイズでは流量が多すぎるため、中間のサイズが欲しいというご要望がありました。COAX®エジェクタは、カートリッジを一本追加したり、一本減らしたりする事で、細かいご要望にも応じた機種選択をすることができます。
また従来機では、余裕を持ったスペックのサイズを選択すると、消費エア量も大きくて効率が悪いという課題がありましたが、一本ずつ調整できるCOAX®エジェクタは、最適な輸送能力と、最適な消費エア量で運転をすることができますので、ランニングコストの削減にも貢献します。
③ライン更新時にも再利用できて持続可能!
初期導入時の搬送物に合わせて輸送機の能力を選定しても、途中で生産品目の変更や、処理能力の増減により、輸送機のスペックが合わなくなる可能性もあります。
COAX®エジェクタは、そのようなシステム変更時にも、一本単位でのエジェクタの追加や削減ができますので、最小限のコストで新しいラインに合わせた輸送機の再利用が可能です。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、粉体輸送装置を効率よく動かすうえでは欠かせない「エジェクタ」について詳しく解説しました。
エジェクタは、発熱がなく駆動部品も少ないため、メンテナンス性に優れていて、長くお使いいただける製品です。
このような省エネでエコな製品が生まれた背景には、環境に対して強い関心を持つ、環境先進国スウェーデンならではの『ものづくり思想』があります。
SDGsの達成率が2020年時点で全166ヵ国中 第1位という好成績からも明らかなとおり、スウェーデンでは昔から、限られた資源を有効活用するという意識が高く、持続可能な生産と消費が行われる社会づくりが国家の目標となっています。
学生時代から、循環型経済(サステイナブル型経済)についての教育を受けており、企業としては、リサイクル可能かどうか、サステイナブルであるかどうかが経営の規範として掲げられています。
すなわち、自然や環境にやさしいプロダクトでなければ市場に受け入れてもらえないという、ハイレベルな市場競争の中で培われた製品開発は、ここ日本でも自信をもって推奨されるべきものといえるでしょう。
エジェクタのPOINT
・コンパクトで扱いやすい
・モータを使わないため、発熱が無い(クリーンルーム、防爆エリアへの設置も可)
・駆動部品が少ないため、メンテナンス性が良い
さらにピアブ社だけのCOAX®エジェクタが優れているPOINT
・不具合時にも即復旧が可能
・ムダのないエア消費でコストダウンに貢献
・ライン更新時にも再利用できて持続可能
製造現場の“省人化・省力化”のご相談はジェイピーネクストへ
エジェクタの分野において、高い技術力と豊富な経験を持つ「ピアブ社」のバキュームコンベアは、これから粉体輸送機をご検討されるお客様にとって、最良の選択肢の1つになるはずです。
現場改善にお取組みをする中で、「自社環境にも輸送機がフィットするか知りたい」、「こんな粉体も輸送できるのか?」など、お困りごとがありましたら、私たちがアドバイスさせていただきますので、いつでもご相談くださいませ。
弊社ではバキュームコンベアの他にも、様々な「製造現場の改善」ができる製品を、数多く取り揃えております。
・これまでよりも少ない人数で生産をしなければならない
・人が介在せずに生産できるよう、自動運転にしたい
・免疫力を高める為に人手での労力を少しでも軽減したい
このようなお困りごとがありましたら、お気軽にご相談ください。
これまでに、製造現場の省人化・省力化・生産性の向上など、お客様と共に多くの課題を解決してきた私たちだからこそ、今できることを考え続けます。